仮想化をおすすめできないケースとは
2025.12.1延命コラム

「仮想化すれば、産業用PCの問題はすべて解決する」
そう思っている方が非常に多いので正直にお話します。仮想化は確かに究極の延命手段ではありますが、万能ではありません。
私たちは産業用PCの修理・延命を20年以上やってきてますので、これまで仮想化も数多く手がけてきました。でも、お客様に「この場合は仮想化はおすすめできないです」とお伝えするケースも実は結構あるのです。
そこで今回は、あえて仮想化の「影の部分」について正直にお話しします。
仮想化をおすすめできない3つのケース
1. Windows 10、11など「最新OS」の仮想化
意外かもしれませんが、Windows 10や11といった比較的新しいOSは、現時点では仮想化のメリットが薄いです。
理由はシンプルで、現役で部品が入手しやすいから。
仮想化の最大の目的は「ハードウェアに依存しなくなること」です。部品が入手できない、マザーボードが老朽化してきたなど、物理的な制約から解放されるのが仮想化の特長なのです。
でも、Windows 10や11が動くPCなら、まだまだ現役で使えます。わざわざ仮想化する必要はありません。
それに、最新OSはパワーをかなり消費します。仮想化するとホスト(大元のコンピューター)側のパワーを消費するので、ボトルネックになってしまうことが多い。Windows 10対応のマシンで、その上にWindows 10をゲストとして動かす事は、正直あまり意味がないのです。
私たちが仮想化をおすすめするのは、基本的に「Windows XP以前」の古いOSになります。
Windows 7は、現時点ではまだ微妙なラインです。サポート終了から5年経ちましたが、まだリスクヘッジの手段は他にもあるからです。
2. インターネットに接続している環境
実は一番トラブルが多いのがこのケースです。
仮想化自体は問題なくできます。しかし、運用面で想定外の問題が起こることがあります。
具体的な事例をご紹介します。
夜中に鳴り響くアラーム
ある製造業のお客様の現場で、Windows 2000のPCで動いている設備がありました。インターネットに接続しており、24時間365日動かしている環境です。
そのWindows 2000を、Windows 10 IoT版をホストとして仮想化しました。技術的には問題なく動作しました。
ところが、夜中にアラームが鳴り出したのです。
何が起きたかというと、ホスト側のWindows 10が勝手にWindows Updateを始めて、勝手に再起動してしまったんですね。そうすると、その上で動いているゲストOS(Windows 2000)も止まってしまう。
Windows 2000はすでにWindows Updateされていないので、普段は24時間つけっぱなしでも何の問題もありませんでした。しかし、仮想化してWindows 10の上に載せた途端、Windows 10の「Update後の再起動」という呪縛からは逃れられなくなりました。
このように仮想化の最大の難点は、最新のOSを使わないといけないことがあります。
最新のOSというのは、アップデートや再起動が連続して起こります。そして、これは、どうしても避けられません。
でも、古いPCを使い続けているお客様には、アップデートという概念がない事も多いのです。
24時間365日つけっぱなしが当たり前という感覚で何年も運用してきたお客様に、急に「月に1回は再起動します」と言われても、現場としては困るわけです。
3. 外部インターフェースの制約

これは技術的な制約なんですが、一部の外部インターフェイス(USB、PS / 2、LPT、RS-232C(COM)、LAN、SCSI、RGB / DVIなど)で設備と接続している場合、基本的に仮想化はできません。また、特定用途の特殊ボードは要注意です。各装置のベンダーに事前確認を行うことを推奨します。
仮想化はあくまでソフトウェアの世界なので、物理的な特殊インターフェースには対応できないケースが多いのです。
【余談】マイクロソフトの呪縛からは逃れられない?
ここまで読んで、こう思いませんでしたか?
「じゃあ仮想化を行っても微妙なのか・・」
それは違います。仮想化は、導入の仕方を間違えなければ究極の延命手段なのは間違いありません。
ただ、一つだけ覚悟しておいてほしいことがあります。
それは「マイクロソフトの呪縛からは逃れられない」ということです。
例えば、Windows 2000を使っていた時は、もうマイクロソフトの手からは一時的に離れていたわけです。Windows Updateもない、勝手に再起動もしない、ただ黙々と動き続けるだけで、ある意味、平和だったかもしれません。
しかし、それをWindows 10や11の上に仮想化することは、またマイクロソフトの支配下に戻るということなんです。
数年後には、Windows 10からWindows 11への強制移行があるかもしれない。その次はWindows 12、Windows 13・・。せっかく古いOSで解放されたのに、また新しいバージョンとお付き合いしなきゃいけなくなる。
余談ではありますが、これが仮想化の「影の部分」のひとつでもあります。
それでも仮想化が必要なケースとは
では、どういうケースで仮想化をおすすめするのか。
それは、部品の入手がもう絶望的で、かつPCが壊れたら設備全体が止まるというケースです。
例えば:
- Windows NT、Windows 2000、Windows XPといった古いOS
- マザーボードの製造終了から10年以上経過
- 交換部品の在庫がもうどこにもない
- 設備の制御ソフトが特殊で、OS移行ができない
こういった「八方塞がり」の状況では、仮想化は確かに有効な選択肢になります。
ただし、Windows Updateの問題や、定期的なメンテナンスの必要性について、当社では事前にしっかりと説明しています。お客様にご理解していただいた上で、仮想化を検討していただくようにしておりあます。
当社の仮想化サービスについて以下をご覧ください。
仮想化以外の選択肢もある
産業用PCの延命方法には、仮想化以外のアプローチもいくつかあります。
延命サービス
今あるPCの部品を交換・修理して、できる限り長く使う方法です。Windows Updateの問題もなく、今の運用をそのまま続けられます。
ミラーコンピュータ制作
今のPCと全く同じ環境を、別のPCに複製する方法です。故障時の切り替えがスムーズで、バックアップ機としても使えます。
日本ピーシーエキスパート
どの延命方法が最適かは、お客様の環境や運用方針によって変わりますので、まずは私たち専門家にご相談いただければと思います。
よくある質問
Q. 仮想化の技術が進化すれば、Windows Updateの問題は解決しますか? A. 残念ながら、むしろ増える可能性が高いです。Windows Updateは今後もっと頻繁になるでしょうし、セキュリティ要件も厳しくなっていくでしょう。仮想化の技術が進化しても、ホストOSがマイクロソフトの製品である限り、この問題からは逃れられないと思います。
Q. 事前の環境調査で、Windows Updateの問題は予測できますか? A. 正直に言うと、Windows 10やWindows 11を使う時点で、この問題は避けられません。環境に依存するというより、OSの特性そのものなのです。だからこそ、事前にしっかり説明して、お客様に理解していただくようにしています。
Q. インターネット接続していない環境なら、仮想化は問題ないですか? A. インターネット接続していなければ、Windows Updateの自動実行リスクは大幅に減ります。ただし、完全にゼロにはなりませんし、ホストOSのメンテナンスは別途必要です。この点も含めて、事前に運用方法をご相談させていただいています。
Q. 仮想化した後のサポートはありますか? A. もちろんサポートいたします。仮想化後の運用、トラブル対応、定期メンテナンスまで対応しています。特にWindows Update関連のトラブルは、私たちが最も多く経験している分野ですので、安心してお任せください。
仮想化は「納得した上で行う」
仮想化は、確かに究極の延命手段です。でも、いいことばかりではないことを正直に書きました。
Windows Updateの問題、定期的な再起動の必要性、マイクロソフトの新バージョンとの付き合い、こういった「影の部分」は確かにあります。
大事なのは、「メリットとデメリットを両方知った上で、仮想化を選択いただきたい」ということです。
私たちは、お客様にとって本当に最適な延命の選択肢は何かを、正直にお伝えしています。時には「仮想化ではなくこの延命方法がいいかもしれません」と言うこともあります。
もし今、古い産業用PCの延命でお悩みなら、一度ご相談ください。仮想化がベストなのか、それとも他の延命方法がいいのか、現場の状況を見ながら一緒に考えましょう。
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