【旧世代OSのレガシーPC】仮想化に際してのポイント
2025.7.18延命コラム
旧世代OS(DOS3/DOS5/DOS6/PC-DOS/Windows 95/98/NT/2000/XPなど)で稼働する産業用PCは、今も現場の第一線で使われていますが、これらのPCが故障した場合、もはや新品の入手は非常に困難です。
旧OSを搭載したPCを延命・再生させる方法として「仮想化」があります。仮想化を行うことで、現在使用中のアプリケーションやデータをそのまま維持しながら、最新のPC環境上で現在のアプリケーションを動かすことが可能になります。
ただし、すべてのPCが簡単に仮想化できるわけではなく、事前の調査や対応ノウハウが必要不可欠だと言えます。
仮想化の壁となる課題
まずは、仮想化を行う際に2つの課題があります。
1. 周辺機器(I/O)対応の問題
古い産業用PCでは、産業機器や計測装置との接続にISAやPCIなどの古典的インターフェースがよく使われています。仮想化環境ではホストOSがそれらを認識できるドライバーが必須となります。対応ドライバがなければ、仮想化しても動作しません。
機器・インターフェース | 仮想化のしやすさ | 備考 |
---|---|---|
SCSI, RS-232C |
◎ | ドライバが手に入りやすく、ほぼ問題なし |
GPIB |
◯ | ドライバ取得が比較的簡単 |
ISA/PCIボード |
△ | ドライバやリアルタイム制御がネック |
経験上、SCSI,RS-232Cはほぼ確実に仮想化ができます。GPIBも比較的ドライバが入手しやすいですが、ISA, PCI経由の特殊ボードを使っている場合はベンダーに確認が必要となります。
また、特定用途の特殊ボードは要注意です。各装置のベンダーに事前確認を行うことを推奨します。
2. リアルタイム性と処理遅延
仮想環境では必ず「ホスト → ゲスト」のプロセスを経るため、I/O処理では遅延(オーバーヘッド)が生じます。計測データや制御信号にリアルタイム性が求められる現場では、この遅延が影響を与えることがあります。実際の運用で動作を確認する必要があります。
ハイパーバイザ型仮想環境の有望性
最近では、VMware ESXiやMicrosoft Hyper-Vなどのハイパーバイザ方式(ベアメタル型)による標準仮想化が進化しており、リアルタイム性を保持しつつ古いI/Oを扱える領域が広がっています。
私たち日本ピーシーエキスパートでもこれら発展途上の技術の検証に積極的に取り組んでおり、「レガシーマイグレーション」を実現する技術になると考えてます。
【仮想化事例】地方自治体の水道局様
実際に、仮想化でレガシーPCを延命したお客様として、地方自治体の水道局様がいらっしゃいます。仮想化の相談をいただいたきっかけとして、長年使用されているWindows NTの産業用PCが起動しなくなったことです。
この水道局様は5年以上の長期利用と信頼性を確保したいとお考えで、まずは応急修理を行い、並行してシステムの仮想化を提案を行いました。
故障したPCは部品交換で復旧させ、既存のシステム環境をそのまま新しいPCへ仮想化して移行が成功しました。これにより、旧型ハードウェアの故障リスクを根本から解消し、安定した長期運用を実現した事例であります。
この事例の詳細はこちらでご紹介してます
まとめ:仮想化に際してのポイント
仮想化には、以下の様な課題や方法があることを今回ご紹介しました。
- ドライバの確認:旧インターフェース(ISA/PCI等)には対応可否を必ず確認
- 検証運用が必須:IO処理に遅延がないか、本番環境でのテストが不可欠
- ハイパーバイザ導入の検討:ベアメタル型による仮想化は将来性あり
旧世代OSの稼働環境を残すには、単なる修理だけではなく、「仮想化による延命・移行」が重要な戦略となります。

日本ピーシーエキスパート
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