延命コンサルの現場から
COLUMN

フォトカプラの経年劣化が産業用PCを止める?電解コンデンサだけじゃない、もうひとつの“寿命部品”

2026.2.13延命コラム

フォトカプラの経年劣化が産業用PCを止める?電解コンデンサだけじゃない、もうひとつの“寿命部品”

先日、製造業のお客様から「数年前に電解コンデンサは交換済みなのですが、また故障したので見てもらえませんか」というご相談をいただきました。

電解コンデンサが経年劣化パーツの代名詞であることは、設備担当の方ならご存知かもしれません。液漏れ、容量抜け、膨張など、見た目でわかる劣化だからこそ、予防交換の対象にもなりやすいからです。

フォトカプラ

でも、実は電解コンデンサと並んで「確実に劣化する部品」がもうひとつあります。

それがフォトカプラという部品です。

フォトカプラとは何をしている部品なのか

フォトカプラ

フォトカプラは、回路と回路を「光」でつなぐ部品です。内部には小さなLED(発光素子)とフォトトランジスタ(受光素子)が向かい合って封入されていて、電気信号をいったん光に変換し、それを再び電気信号に戻します。こうすることで、2つの回路を電気的に完全に絶縁した状態で信号を伝えることができるのです。

回路図

なぜ絶縁が必要なのか。たとえば産業用PCの電源回路では、高電圧の1次側と低電圧の2次側を分離する必要があります。このとき、出力電圧の情報を1次側に「安全に」戻すために、フォトカプラが使われています。また、工場の制御回路では、センサーからの信号を絶縁してPC側に取り込む場面でも活躍しています。

つまりフォトカプラは、電源の安定制御や信号の伝達という、産業用PCの「心臓部」に近い場所で働いている部品なのです。

フォトカプラの劣化は「見えない」

電解コンデンサの劣化は、膨らんだり液漏れしたりと、目視でわかるケースが少なくありません。

しかし、フォトカプラの劣化は外見からはまったくわかりません。パッケージは変色もしなければ、膨らみもしない。基板上で何事もなかったかのように鎮座している。けれど中身のLEDは確実に衰えています。

しかも厄介なのは、フォトカプラの特性が「徐々に」変化することです。ある日突然動かなくなるのではなく、CTR(電流伝達率)がじわじわ低下していく。電源回路に使われているフォトカプラであれば、出力電圧が微妙に不安定になったり、制御ループの応答が遅くなったりする。制御信号用であれば、信号の伝達が不確実になります。

現場で「なんとなく動作がおかしい」「ときどきエラーが出る」という症状が出ているとき、原因がフォトカプラの劣化だったというケースは、実は珍しくありません。

電源ユニットの“寿命”を決めているのは、実はフォトカプラかもしれない

産業用PCの電源ユニットには、ほぼ例外なくフォトカプラが搭載されています。

スイッチング電源の帰還回路(出力電圧を監視して制御にフィードバックする回路)で、1次側と2次側を絶縁しながら信号を伝えるために使われているのです。ここのフォトカプラのCTRが低下すると、電圧制御のループ応答が遅くなり、負荷変動時に電圧が安定しなくなります。最悪の場合、電源が出力を維持できなくなり、PCが突然シャットダウンします。

以前、当社のコラムで「産業用PC用電源ユニットなのに85℃コンデンサ?」という記事を書きましたが、実は電源の寿命を考えるとき、電解コンデンサとフォトカプラの両方を見なければいけないのです。

メーカーのデータシートを見ると、あるフォトカプラでは「経年変化として赤外発光ダイオードの出力低下(50%/5年)を考慮し回路設計してください」と明記されています。

5年で半分。設計段階でそう言っているということは、10年以上使う産業用PCでは、とっくに設計マージンを超えている可能性があるということです。

内蔵LEDは約8000時間で光出力が70%まで劣化

ここからが本題です。

フォトカプラの内蔵LEDは、通電時間とともに確実に発光効率が落ちていきます。東芝のデータによると、IF=50mA、周囲温度40℃という条件で、約8,000時間で光出力が初期値の70%まで低下します。

変化図

8,000時間。24時間連続稼働の工場なら、たった333日です。1年足らずで、すでに3割の光量を失っている計算になります。

もちろん、70%になったからといって即座に故障するわけではありません。回路設計の段階で、ある程度のマージンは確保されています。

しかし問題は、この劣化が止まらないということです。8,000時間がゴールではなく、そこから先もどんどん低下し続ける。10年、15年と使い続ける産業用PCにとって、これは無視できない問題です。

劣化を加速させる要因

フォトカプラの劣化速度は、大きく2つの要因で決まります。

ひとつは温度。周囲温度が高いほど、LEDの劣化は加速します。工場内の産業用PCは、空調の効いたオフィスとは環境がまったく違います。粉塵、振動、そして高温。電源内部の温度が50℃、60℃に達していることも珍しくありません。データシートの40℃条件での劣化曲線は、あくまで「おだやかな」想定です。実際の工場環境では、もっと早く劣化が進んでいる可能性が高い。

もうひとつはLEDに流す電流(IF)の大きさ。電流が大きいほど、劣化は早くなります。設計段階での電流設定に余裕がなければ、それだけ寿命は短くなる。

この2つの要因が重なると、カタログスペックよりもかなり早い段階でフォトカプラが限界を迎えることがあります。

電解コンデンサだけ交換しても不十分な理由

ここまでお読みいただければ、冒頭の「電解コンデンサを交換したのに、また故障した」の理由がおわかりいただけるのではないでしょうか。

電解コンデンサの予防交換は大切です。しかし、それだけでは「延命」としては不十分なケースがあります。

基板上には、電解コンデンサ以外にも経年劣化する部品がいくつもあります。フォトカプラはその代表格ですし、リレーやハンダ接合部の劣化も見逃せません。ひとつの部品だけを新品にしても、他の劣化部品がそのままなら、結局どこかで止まってしまいます。

これが「部品を交換する」だけのPC修理と、「設備全体を見据えた延命」の違いです。

当社が「延命コンサルティング」として、単なる故障修理ではなく設備全体の寿命を見るアプローチをとっているのは、まさにこういう理由からです。

3万台以上のPC修理・延命の現場を見てきた経験から言えるのは、「部品単位ではなく、基板全体、さらには設備全体で考えなければ、本当の延命にはならない」ということです。

フォトカプラの劣化にどう対処するか

では、具体的にどう対処すればいいのか。

まず、稼働年数が10年を超えている産業用PCは、フォトカプラの劣化を疑ってみることをおすすめします。特に電源ユニットの不安定な挙動や、制御信号の異常が断続的に発生している場合は要注意です。

ただ、コンデンサはかなりの確率で使えなくなり、交換の効果はありますが、私の知る限り、実際にフォトカプラが原因で壊れた経験は実はありません。理論的には交換推奨ですが、交換難易度が高いパーツですので交換必須ではないのです。

すでにPCが故障している場合の対処としては、修理で機能を回復させた後に、将来故障しそうな部品のオーバーホールまで行う延命をご提案しています。

まとめ

フォトカプラは、「壊れない部品」だと思われがちです。でも実際には、内蔵LEDの発光効率が通電時間とともに確実に低下していく、れっきとした「寿命部品」です。

10年以上稼働している産業用PCの中には、フォトカプラを含む複数の部品が同時に寿命を迎えつつあるものが少なくありません。「なんとなく調子が悪い」「原因不明のエラーが出る」といった症状の裏に、フォトカプラの劣化が隠れていることがあります。

当社はこれまで3万台以上のPCの修理・延命してきました。電解コンデンサだけでなく、フォトカプラやリレーなどの経年劣化部品まで含めた総合的な延命策をご提案できるのは、この豊富な経験があるからこそです。

壊れてから慌てるのではなく、動いているうちに対策を。それが、製造業のリスク管理の基本です。

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担当コンサルタント

森田 起也

森田 起也(もりた たつや)facebook

株式会社日本ピーシーエキスパート

幅広いスキルや経験を生かして、メーカーや修理会社が絶対に行わないような、マニアックな修理を得意としている。お客様のご要望・ご希望を受けとめたうえで、最も費用対効果の高い延命方法を提案する技術者。