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古い産業用PCの仮想化におけるリスクと対策

2025.1.10延命コラム

古い産業用PCの仮想化におけるリスクと対策

古い産業用PCの仮想化には多くのメリットがありますが、すべての環境で仮想化できるわけではなく、いくつかのリスクも伴います。
ハードウェアの依存やライセンス、互換性などの問題が多いのですが、現場によって様々なケースがあります。
今回は古い産業用PCの仮想化における代表的な問題やリスクをいくつか挙げ、それぞれの対策についても解説いたします。

ハードウェアへの依存の問題

古い産業用PCは特定のハードウェアや周辺機器に依存している場合があります。その状態を仮想化環境で再現できない場合、システムの動作に影響を及ぼし、業務で使えない可能性があります。

具体的な依存例としては、以下のようなものがあります。

     
  • 工場のセンサーデータ収集カードや制御用カードなどPCI/ISAバスに接続された専用のI/Oカード、シリアル通信カード、またはアナログ信号処理カード
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  • シリアルポート(RS-232、RS-422、RS-485)を使った古い通信プロトコルが利用されていたり、特定のデバイスとプロトコルに依存するカスタム通信(ただし、特殊なインタフェースを使わず、LANのみで制御してる場合であれば仮想化は可能です)
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    ハードウェアへの依存の問題

     
     
  • ソフトウェアライセンスを認証するためのUSBやシリアルポート接続のハードウェアドングル
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  • 特定の周辺機器や制御システムに対応するためにカスタマイズされたBIOSが必要な場合
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  • 古い産業用PCに直接接続された独自のディスプレイユニットやタッチスクリーン
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  • 工場のラベル印刷や帳票出力のための特殊なドットインパクトプリンターや熱転写プリンター
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  • PROFIBUS、CANバス、EtherCATなどの産業用通信ネットワークに接続されたデバイスや、アナログ信号をデジタルに変換するための独自仕様のデバイス

これらのハードウェアへの依存を解決しない場合、仮想化が成功してもシステムが正常に機能しない可能性があります。

対策

仮想化を行う前に、FAPCや周辺機器の構成などの依存の関係を詳細に洗い出す事前調査が大事です。また、特定のハードウェアや周辺機器を仮想化環境でエミュレーションできるか検討します。(例:USB-シリアルコンバーターやPCIパススルーの利用など)

ライセンスや互換性の問題

古いソフトウェアやOSには、仮想環境でのライセンス制約や互換性の問題が発生する場合があります。特に、すでにサポートが終了しているOSでは注意が必要です。

一部の例をあげますと

     
  • 一部のソフトウェアは、特定の物理ハードウェア(CPUやマザーボードのシリアル番号など)に結びついたライセンス認証を使用しており、仮想環境では認証が失敗する場合があります。
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  • USBやシリアルポート接続のハードウェアドングルをライセンス認証に利用している場合、仮想環境でこれをエミュレーションできないと動作しません。
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  • 仮想化の過程で、ハードウェア構成が変化したとソフトウェアが認識し、ライセンスの再認証を求められる場合がありますが、メーカーがすでにサポートを終了していて再認証できないことがあります。
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  • 一部の古いソフトウェアでは、使用許諾契約書(EULA)に仮想化を禁じる条項が含まれている場合があります。
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  • Windows XPやWindows Server 2003などの古いOSでは、仮想環境での使用が公式にはライセンスの対象外とされている場合があります。
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  • 古いソフトウェアのライセンスキーが紛失している場合、仮想環境で再インストールする時に認証できない。

対策

仮想環境で古いソフトウェアやOSを実行する際は、ライセンス条件をメーカーに確認し、仮想化環境で互換性テストを行う必要があります。
また、必要に応じて、仮想環境から特定の物理ハードウェア(例: USBドングルやPCIデバイス)を直接使用する機能を活用します。
特定の古い環境に依存するソフトウェアについては、DOSBoxやPCemなどのエミュレーションツールを使用する場合もありますし、必要に応じて、仮想化が難しいソフトウェアやOSの代替製品を検討する必要性も出てきます。

リアルタイム性の問題

通常の仮想化技術では、仮想マシン(VM)間でリソースを共有するため、タスクの実行が遅延する可能性があります。これにより、生産プロセスが遅延するリスクがあります。
制御系アプリケーションやプロセス管理がミリ秒単位の正確な処理を要求する場合が多いため、支障が出るケースもあります。

対策

リアルタイム処理が必要な場合は、リアルタイム対応の仮想化ソリューションを導入します。リアルタイム対応の仮想化ソリューションとは、リアルタイム性を必要とするシステムやアプリケーションを仮想化環境でも適切に動作させるための技術や仕組みを備えたソリューションのことです。

主なリアルタイム仮想化ソリューションの種類

・リアルタイムOS (RTOS) の仮想化
・ハイパーバイザーのリアルタイム対応
・リアルタイムカーネルの採用
・パーティショニング型アーキテクチャ

高精度なタイミング制御のために専用ハードウェア(例: Intel VT-xやAMD-Vのような仮想化支援技術)が必要な場合があります。
注意点として、リアルタイム仮想化は通常の仮想化よりも設計や設定が複雑です。
また、リアルタイム対応のソリューションやライセンス料が高額になることがあります。
選定にあたっては、具体的な要件(例: 処理のタイミングやハードウェアの制約)を考慮し、適切な技術や製品を選ぶことが重要です。

その他のリスク

その他のリスクとして、仮想化中に予期せぬトラブルが発生した場合、重要なデータが失われる可能性もゼロではありません。
また、古いOSやソフトウェアを仮想化した場合、既知のセキュリティ脆弱性が残ることがあります。これにより、ネットに接続されている場合はサイバー攻撃のリスクが高まる可能性があります。

対策

仮想化を実施する前に、プログラムも含めすべてのデータのバックアップは必ず行うようにしましょう。一部のデータが欠けてるだけでも動かなくなりますのでバックアップはプロにまかせたほうが安心です。
また、セキュリティの問題も仮想化環境に適切なセキュリティ対策(例: ファイアウォールやネットワーク分離)を導入することである程度は解決できます。

まとめ

仮想化は古い産業用PCの寿命を延ばす究極の延命方法ですが、リスクがあることも考慮して、実施する必要があります。

ある程度のリスクは事前調査の段階でわかることが多いのですが、仮想化作業を進める中で発生する問題も少なからずあります。

そのためにも仮想化の豊富な経験がある会社を選定して、リスク管理を徹底することが大事です。

日本ピーシーエキスパート

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私たち日本ピーシーエキスパートは豊富な仮想化の経験がありますので、古い産業用PCの仮想化を検討されているお客様はお気軽にご相談いただければと思います。

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