【事例でわかる】三次元測定機の制御PCが故障した時の対応策
2026.7.21延命コラム

結論から言うと、三次元測定機の制御PCが故障しても、測定機本体ごと更新する必要はほとんどありません。制御PCの修理や劣化部品のオーバーホール、整備済みPCへの移植といった延命で、測定機を今まで通り使い続けられるケースが大半だからです。
日本ピーシーエキスパートではこれまで3万台以上の産業用PCを修理・延命してきましたが、三次元測定機の制御PCは特にご依頼の多いPCのひとつになります。
この記事では、実際に当社が対応した5つの延命事例をもとに、状況別の最適な対応策をご紹介します。
三次元測定機の制御PCが止まると、何が起きるのか
三次元測定機が止まると、影響は測定業務だけにとどまりません。品質保証の工程が止まるということは、出荷ができなくなるということです。
すでに製品はできているのに、検査ができないから出荷できない。生産ラインは動いているのに、出口が塞がってしまっている状態になります。
しかも三次元測定機は本体が非常に頑丈に作られていますので、お客さんの中には20年、30年と現役で使われている会社は珍しくありません。ところが、その測定機を制御しているPCの寿命はそこまで長くはありません。
実際、当社に依頼されるものでも、OS/2 WarpやWindows 2000といった、今ではほとんど見かけないOSで動いている制御PCが一定数あります。
なぜなら、測定機メーカーの専用ソフトがそのような古いOSでしか動かないため、PCだけ新しいものに買い替えても、ソフトが動かないので簡単に入れ替えできないからです。
メーカー対応は基本的に「古いPCの修理は専門外」
古い制御PCが壊れた時、お客さんはまず測定機メーカーへ相談されます。それ自体は通常の流れなのですが、メーカーから返ってくる答えは厳しいものが多いようです。
実際、当社にご相談いただいた東京都の製造業様は、東京精密製の三次元測定機の制御PCが起動しなくなった際、設備メーカーに相談したところ「古いPCは専門外ですので」と断られています。
測定機メーカーは測定機の整備のプロであって、20年前のPCの整備はできません。そのような古いPCは部品保有期間もとっくに過ぎていますし、メーカーが断わること自体は、責められる話でもないのです。
問題は、その先です。メーカーから提示されるのは、多くの場合「測定システムごと更新してください」という提案になります。機械としてはまだ精度も出ているような十分使える測定機を、制御PCが起動しないという理由だけで丸ごと入れ替えてくださいと言われても納得できないとおっしゃられていました。そうやって当社にたどり着くお客様が後を絶ちません。
では、三次元測定機の制御PCが故障した場合、実際にどのような対応策があるのかを、5つの事例でご紹介いたします。
【事例1】メインボード故障を基板レベルで修理──「あと1年」を確実に走り切る
東京精密製の三次元測定機(TSM-845GV-B01)を使っていた東京都の製造業様のケースです。OS/2 Warp搭載の制御PCが、ある朝突然起動しなくなりました。平日は常時稼働している工場の要となる設備です。

このお客様の状況には、はっきりした特徴がありました。1年後にシステム入替が決まっていたのです。つまり必要なのは「あと1年、確実に動くこと」。費用よりも納期を最優先したい、というご要望でした。
検査の結果、原因はメインボードの故障。当社は基板補修を行うとともに、経年劣化したCPU冷却機構のオーバーホール、そしてOS/2 Warpのシステムデータを磁気情報レベルで抽出したうえで、高信頼性の産業用ストレージへ換装しました。残り1年の稼働期間をトラブルなく完走するための、耐久性重視の処置です。

結果、測定機は正常に起動し、データ消失もなく最短工期で現場へ戻りました。「更新までのつなぎ」という明確なゴールがあるなら、そこに合わせた延命設計ができる。これがひとつめの対応策です。
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【事例2】整備済みの同型PCに入れ替える
新潟県の製造業様からは、三次元測定機用のFAPC(IBM Personal Computer 330・OS/2 Warp)がハードディスクエラーで操作できない、というご相談をいただきました。測定機本体はまだまだ使えるので、あと5年は使いたいとのことでした。

このケースで当社が提案したのは、修理ではなく機種入替でした。実は当社は三次元測定機用FAPCの修理依頼が非常に多く、IBM 300PLを整備して在庫しています。
故障したPCを引き取り、整備済みのIBM 300PLに入れ替え、HDDも新品に交換する。もちろん中身は磁気情報レベルでそのままコピーするので、接続すれば今まで通り測定機が使えます。
ここでひとつ、技術的な壁がありました。新品で入手できるHDDは80GBと、当時の規格からすると大容量すぎて、いわゆる「BIOSの壁」で起動できないのです。そこでHDD容量を意図的に小さく認識させるクリッピング処理を行い、トラブルなく起動する状態に仕上げました。

古い設備の延命は、部品を集めれば終わりではありません。こうした世代間の互換性問題を解決するノウハウがあって、初めて成立します。
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【事例3】インストールディスクがなくても復旧できる──磁気情報の抽出という技術
「HDDが壊れた。しかもOSのインストールディスクが見つからない」
これは復旧を諦める理由になりがちな状況ですが、諦めるのはまだ早い、という事例をご紹介します。
東京精密製の三次元測定機(PA1500A-V-42X)を長年運用されていたお客様の制御PC、IBM 300PLが夏季休暇明けに起動しなくなりました。HDDの保護回路が破損し、OS/2 Warpが起動しない。再インストールしようにもディスクがない。メーカー修理が難しい状態でした。

当社は、物理故障を起こしたHDDから磁気情報を抽出し、欠損したシステムファイルを修復することで、ディスクがない状態からOS/2 Warp環境を再現しました。あわせて電源ユニットのオーバーホールと産業用ストレージへの換装を実施。結果として、故障前よりもシステムの信頼性が向上した状態で納品できました。

お客様からは「高額な装置の買い替えを回避でき、OS/2 Warp環境のまま安心して業務を継続できる」との評価をいただいています。
休暇明けの起動トラブルは実は多いパターンで、長期停止からの再起動は古いPCにとって大きな負荷になります。連休明けこそ要注意だと断言しておきます。
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【事例4】移設後に起動しなくなったWindows 7機を「あと5年」のためのフルオーバーホール
古いOSだけの話ではありません。Windows 7搭載機でも同じことは起きます。
埼玉県の製造業様は、他社からミツトヨ製三次元測定機を移設した際、制御PC(NEC FC98-NX FC-E21G)がメーカーロゴから先に進まなくなりました。OSやソフトのディスクはなし。さらにこのお客様には、社内稟議を通すために修理の確かなエビデンスが必要で、今後5年間は安定稼働させたいという明確なご要望がありました。

当社はストレージ内の磁気情報を特殊技術で抽出し、高耐久な産業用ストレージへ移行。そのうえで「5年使用」という目標に応えるため、メインボード、電源ユニット、冷却ファンといった劣化部品を徹底的にオーバーホールしました。作業内容は詳細な報告書にまとめ、稟議用のエビデンスとしてお渡ししています。
修理完了後はエンジニアが現場へ出張し、測定機との接続・動作確認まで実施。計測機専用ソフトも問題なく動作し、移設前と同様に業務を再開できました。

ちなみに、設備の移設は故障の引き金になりやすいタイミングです。輸送中の振動、電源環境の変化、長時間の停止。移設を予定している設備があるなら、その前に一度状態を診ておく価値は十分あります。
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【事例5】部品交換とOS再構築で復旧。Windows 2000のMCOSMOS環境を守る
奈良県の製造業様からは、ミツトヨ製MCOSMOS三次元測定機(CRYSTA-Plus507)の制御用PC、IBM NetVista/6841が起動しないというご相談でした。

Windows 2000上で専用ソフトMCOSMOSが動作する構成で、このPCが動かなければ高価な測定機そのものが使えなくなります。
調査の結果、原因はメインボードとストレージの故障。故障部品を交換し、Windows 2000とMCOSMOSを再インストールすることで完全に復旧しました。測定機との通信も問題なく、MCOSMOSが安定稼働することを確認して納品しています。

MCOSMOSのような測定機専用ソフトは、OSのバージョンと密接に結びついています。「Windows 2000だから」という理由でPCごと諦める必要はなく、環境ごと維持する方法があります。
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5つの事例からわかること。設備の延命策は「あと何年使いたいか」が大事
5つの事例を並べてみると、あることに気づきませんか。
同じ「三次元測定機の制御PCが起動しない」というトラブルでも、当社の対応は一件ずつ違います。基板修理で1年をつないだケース、整備済みPCへの入替で5年を見据えたケース、フルオーバーホールで5年の安定稼働を設計したケース。
分かれ目になっているのは、故障の内容そのものよりも、お客様が「あと何年、この測定機を使いたいか」のご要望をしっかり確認し、最適なソリューションを提案していることです。
設備入れ替えまでのあと1年程度なら、必要最小限の修理で十分かもしれません。もし5年、10年使い続けたいのであれば、壊れた箇所だけ直しても意味がありません。10年稼働したPCは、電源ユニットもコンデンサも冷却ファンも、すべての部品が同じだけ劣化しています。たまたま寿命が先に尽きた部品が壊れただけで、他の部品も順番を待っている状態です。だからこそ、劣化部品をまとめてオーバーホールや究極の延命である仮想化などを行う「設備延命」という考え方が必要です。
当社はご依頼をいただいた際、必ずお客様の使用予定年数と設備の重要度を詳細にお聞きし、複数の延命プランをご提案しています。どの方法が最適かは、お客様ごとに違うからです。
だからこそ、設備延命でお困りの場合はまずはご相談いただければと思います。
設備延命については動画で解説しております
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これまで当社で行った延命事例をPDFにまとめてご紹介しております。社内でのご検討の際にお使いください。
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